MENU

『恋に至る病』映画化──なぜ僕は救いのない物語に惹かれるのか 🎬

明日、僕の好きな小説『恋に至る病』が実写映画として公開されます。
細かい内容について触れるとネタバレになってしまうため、ここではストーリーそのものではなく、読み終えたあとに残った感情や、この物語がなぜ忘れられないのかという点だけを書きたいと思います。💭

数年前、本屋で偶然この本を見つけました。
タイトルに「恋」とあるのに、表紙はどこか暗く、冷たい印象だった。
その違和感が妙に気になって手に取ったのですが、「恋って書いてるし恋愛ものかな」と思ったのも束の間、序盤でその予想はあっさり裏切られます(笑)。
読み進めるほどに、この物語が“誰かを想うことの美しさ”ではなく、“人の心の危うさ”を描いていることに気づかされました。📖❄️

それほど期待していたわけではなかったのに、読み進めるうちに心が静かに締めつけられ、最後のページを閉じたときには、胸の奥に「言葉にならないざらつき」だけが残っていました。
救われているようで、誰も救われていない。
人を想うことが光になるどころか、むしろ影となって心を蝕んでいく。
この物語は、恋や愛を美しいものとして描くのではなく、むしろ人間の弱さや依存がもたらす崩壊の過程を、冷静な筆致で描いています。

特に、景の宮嶺に向けた恋心は、一体何だったのか。
それは純粋な愛だったのか? それとも宮嶺を操るために作り上げられた感情だったのか?
物語はその境界を明確にせず、読者に問いだけを残します。
ページをめくるたびに、「恋」という言葉の輪郭が曖昧になり、人の心の底に潜む歪みが静かにあらわになっていきました。🖤

作者は、流される人間の末路を、逃げ場のない冷たさで描ききります。
そこには劇的な救いも都合の良い奇跡もありません。
ただ、人の心が壊れていく過程だけが淡々と描かれます。
結末は想像していた以上にしんどく、読み終えた後しばらくは呼吸の仕方さえ忘れるほどの余韻が残りました。

正直なところ、この小説を誰かに気軽に勧めることはできません。
読めば読むほど心がざわつき、安心や希望とは対極にある感情に触れることになるからです。
しかし――僕はこういう物語にこそ、深く惹かれます。
綺麗にまとまった物語以上に、“しんどい物語”のほうが、読み終えたときの満足感は圧倒的に深く、強く残るのです。
しんどいのに、そこに人間の本質が見える。
痛みを伴うのに、どこかで「生きている」と感じる。
その矛盾こそが、この作品の魅力なのだと思います。💧

明日、あの物語がスクリーンで息を吹き返します。
キャスティングには違和感はありません。
むしろ、あの冷たく複雑な感情を俳優たちがどのように表現するのかに静かな期待を寄せています。🎥

『恋に至る病』は、人の心の奥に潜む闇を、そのまま見せてくる物語です。
心地よい物語ではありません。
けれど、だからこそ僕はこの作品を忘れることができません。
しんどくて苦しいのに、読み終えたあと、どこか満たされている――
その感覚にこそ、僕は抗いようのない魅力を感じています。

↑ここまでのは、あくまで僕個人の本を読んだ後の感想です。


【作者紹介】

斜線堂有紀(しゃせんどう ゆうき)先生は、人間の心の奥に潜む「歪み」「執着」「救いのなさ」を静かな語りで描き出す作家です。
美しく整った文体の裏側には、冷徹なまでの観察眼と深い洞察があり、一文ごとに読者の心を静かに揺さぶります。
フィクションでありながら、現実の人間心理と地続きの場所へと導いてくれる稀有な作家です。


【作品紹介】

『恋に至る病』は、「恋」という言葉の持つ甘さや安心感を根底から覆す物語です。
癒やしや希望を求める物語ではありません。
それでも、人間の本質に触れたい、心の奥底にある感情と向き合いたいと思う方にとって、忘れがたい一冊になるはずです。
映画公開をきっかけに、原作にも触れてみてはいかがでしょうか。
ページを閉じたとき、あなたの中にも――何かが静かに目を覚ますかもしれません。

終わりに・・・

斜線堂有紀先生は、一つの型にとどまらず、様々なパターンで物語の魅力を提示してくれる作家さんです。
一冊読めば、その文章の静かな力強さと、人間の感情を深くえぐり取る世界観に取り憑かれると思います。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

好きなことを言葉で繋ぎます!
ブログ初心者なので暖かく見守っていてもらえれば嬉しいです。
また、ハーメルンにてニ次小説を書かせてもらっています!
詳しくはXで!

コメント

コメントする

CAPTCHA


目次